|
九月二十五日から十月十七日まで開催します。上野と谷中、根津、千駄木界隈が会場です。今年で十四年目を迎えました。上野公園内の文化施設と地元のギャラリー、寺院や喫茶店で開催されるアートイベントです。
上野の東京国立博物館では、天平文化の精華を紹介する「東大寺大仏−天平の至宝−」が、十月八日からはじまります。国立科学博物館は、九月十八日から「あしたのごはんのために−田んぼから見える遺伝的多様性−」を開催しています。東京藝術大学大学美術館は、ポンピドー・センター所蔵「シャガール−ロシア・アヴァンギャルドとの出会い−」を十月十一日まで公開しています。そして、地元では、若い作家や外国作家の個展、グループ展、即興詩の朗読、自主製作映画の上映やライブなど、活発に展開されます。
上野の森美術館では、これまで上野に因む浮世絵、版画を収集してきましたが、あまり公開する機会がありませんでした。今回、所蔵作品の広重から小林清親、川瀬巴水まで、「上野さんぽ」として開催します。江戸末期から、明治、大正、昭和の上野の光景です。彰義隊が明治新政府軍と繰り広げた凄惨な場面を表した、歌川芳虎東台大戦争図。貴顕の人々が映画の「マイフェアレディ」よろしく、不忍池畔で競馬を楽しむ様を描いた楊洲周延上野不忍競馬之図。白眉は、藍の色が、未だに鮮やかな、歌川広重の名所江戸百景上野山内月のまつと上野清水堂不忍ノ池の二作品でしょうか。上野公園のグランドデザインでも検討された、清水堂からの俯瞰です。そのほか、明治十年に開催された「内国勧業博覧会一覧」、明治十六年開業した「上野駅」、昭和初期の恩地孝四郎上野動物園など往時を偲んでいただけると思います。別館ギャラリーでの展示です。作品保護のため、十月三日から十三日までと期間が短いので、お見逃しのないよう、是非ご覧いただきますよう、ご案内いたします。

今年のイベントの掉尾を飾るのは、アートドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー』の先行上映です。十月十七日.. 日)午前十一時と午後二時半の二回、東京国立博物館平成館大講堂で公開されます。ハーブ&ドロシー・ボーゲル夫妻は、結婚直後の一九六〇年代から現代美術のコレクションをはじめました。夫のハーブは、郵便局員、妻のドロシーは図書館司書です。ニューヨーク・マンハッタンの小さなアパートに住んでいます。当時無名だった作家達が有名になり、二人のコレクションの価値は高まり、美術界でも屈指のコレクターとして知られるようになりました。小さなアパートは、作品で溢れかえりました。アートの森の小さな二人は、作品のほとんどをワシントンのナショナルギャラリーに寄贈します。慎ましい生活の中で、現代美術の収集につとめた二人に密着した感動の映画です。好きでコレクションを続ける姿勢は、投機の対象として現代美術を捉える人々への警鐘ともなるでしょう。作家達のインタビューをちりばめて構成された映画は、監督・佐々木芽生の処女作になります。あるシーンでは、寄贈後に二人が訪れたギャラリーの資料室を映し出します。ボーゲル氏は、そこに仮展示された抽象彫刻の正面を変更します。その仕草は、作品への限りない造詣に溢れたものでした。カメラは、細やかな表情をよく捉えています。全米各地の映画祭でベストドキュメンタリー賞を受賞しました。当日には、各回上映後、佐々木芽生監督のトークが予定されています。
[入場料千八百円(前売り・予約千五百円)]

芸術の秋、日がな一日、地図を片手に、散策気分で「アートリンク上野−谷中2010」を楽しんでみてください。最後になりましたが、これまでの実施にあたりご支援いただいています、のれん会有志の方々に、あらためてお礼を申し上げます。
(けんもつくにひろ・上野の森美術館)
|