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文化財赤十字の偉業 
特別展「仏教伝来の道平山郁夫と文化財保護」によせて
松本伸之

 
「大唐西域壁画」より「明けゆく長安大雁塔・中国」
平山郁夫筆 2000年 奈良・薬師寺蔵

 「文化財赤十字」という言葉をご存じでしょうか。赤十字は、よく知られているように、世界各国にある人道的な支援団体のことですが、それにならい、支援の対象を文化財に置きかえ、世界中の文化財の保護をうたったのが「文化財赤十字」です。そして、この言葉を提唱したのが、日本画家として著名な平山郁夫氏(一九三〇−二〇〇九年)でした。

 すでにご承知の方も多いと思いますが、平山氏は、二〇〇九年一二月、七九歳の生涯を閉じられました。「仏教伝来」で画壇に本格的にデビューし、その後も、シルクロードや仏教に題材をとった数々の佳品を世に送り出し、半世紀にわたって日本画壇の牽引者として活躍されてこられました。教育者としても、東京藝術大学の学長を長く務め、後進の指導にも大きな貢献をなし、逝去に際しては、各方面において哀悼の声があふれていました。

 平山氏が、画業とともに、生涯をかけて取り組まれたのが、自然の猛威や紛争などによって存亡の危機にある世界中の文化財の保護でした。一五〇回以上にも及ぶ世界各地での取材を通して、危機に瀕している文化財の惨状を目のあたりにすることによって、世界の平和を願ってやまない平山氏の心に、人類共通の財産であり、平和の象徴でもある文化財に対する厚い保護の念が強烈に沸きあがり、途切れることのない文化財保護活動へと邁進されたのでしょう。

 このようにして提唱された「文化財赤十字」構想は、平山氏の強い信念と類まれな行動力によって、実際の保護活動となって実を結びました。バーミヤン大仏や敦煌石窟あるいはアンコール遺跡など、シルクロードや仏教に関する遺跡の保護をはじめ、南京城壁の修復、高句麗古墳群の世界遺産への登録、文化財保護にたずさわる人材の育成、紛争で流出した文化財の保護など、余人をもってはなしがたい、多大な成果の数々です。こうした活動は、国際的な友好親善と平和運動にも大きな影響を及ぼし、世界的にきわめて高い評価を受け、数多くの勲章や賞も授与されました。

 今回の展覧会は、文化財保護法制定六〇周年を記念し、平山氏が身をもって取り組んでこられた文化財保護活動を広く紹介し、その偉業を顕彰しようとするものです。全体は二部構成になり、平山氏が深い関心をいだいた仏教伝来の道ゆかりの文化財の数々と、平山氏自身の作品とを共に展示し、両者を同時に鑑賞していただくという、いささか欲張りな内容となっています。ここで、その概略を紹介してみましょう。

 
仏伝図「カーシャパ兄弟の仏礼拝図」2〜3世紀
アフガニスタン・カピサ地方出土
流出文化財保護日本委員会保管
(原カブール国立博物館)

 第一部は、「文化財の保護と継承−仏教伝来の道」です。仏像発祥の地であるインドやパキスタンをはじめとして、アフガニスタン、中国、カンボジアなど、仏教伝来の道に沿った地域に焦点をあて、平山氏が強く保護を願った仏教文化の精華を展観します。中には、アフガニスタンの壁画や石彫のように、内戦によって破壊されたり、国外に流出したりした文化財を保護したものも含まれています。

 第二部は、「文化財保護活動の結実−大唐西域壁画」と題し、二〇〇〇年の大晦日、奈良・薬師寺の玄三蔵院に奉納された「大唐西域壁画」を、寺外ではじめて全点公開します。この壁画は、玄三蔵の西方への旅になぞらえ、西安(長安)からはじまり、中国西境の嘉峪関、西域の高昌故城を経て、ヒマラヤ山脈をイメージした須弥山、アフガニスタンのバーミヤン石窟、インドのデカン高原へと続き、ナーランダの夜景で結ばれています。構想から二〇年以上を要し、三七メートルにも及ぶ画面で構成された雄大な壁画は、平山氏の様々な活動や想いが集約された、まさに畢生の大作です。

 新春の一日、「文化財赤十字」に共感してみてはいかがでしょうか。

(まつもとのぶゆき・東京国立博物館)

 


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