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特別展 The Art of Gaman 尊厳の芸術展 薩摩雅登

特別展 The Art of Gaman 尊厳の芸術展
左上:<鳥のピンブローチ>作者不詳

左下:<そろばん>Shoya Sakazaki

右:<三段箪笥>Giichi Kimura

さて、皆様はこの展覧会タイトルからどのような内容を想像されるでしょうか。この「Gaman」は日本語ですと説明されても、「我慢のアート」が何故「尊厳の芸術」なのか、ますますわからなくなるかもしれませんね。

2010年にワシントンのスミソニアンアメリカ美術館レンウィックギャラリーで開催された「The Artof Gaman」は、第2次世界大戦中に強制収容所に収容された日系アメリカ人たちが、生活のために手作りで制作した日用生活品、美術工芸品などの数々を紹介して、アメリカ国内で大きな反響を呼び、同年11月にNHKの「クローズアップ現代」でも紹介されて我が国でも話題になりました。

1941年12月の真珠湾攻撃によって日米が開戦すると、アメリカ西海岸沿州で生活していた12万人以上の日本人移民と日系アメリカ人は、1942年2月の大統領令9066号によって、家や家財道具を整理するひまもなく、手荷物ひとつで強制収容所に送られました。これは自由と民主を謳うアメリカ憲法に明らかに抵触する政策で、心ある人たちからは批判もありましたが、アメリカ政府にも苦しい事情がありました。

開戦以来、海に陸に快進撃を続ける日本陸海軍の力量に驚愕したアメリカ政府は、日本軍のアメリカ西海岸上陸を真剣に警戒して、その時にどのような動きをするのか懸念される西海岸在住の日系人を世間から隔離して監視下においたのでした。

しかしながら、異国で苦労して築き上げた生活基盤から突然追われて、内陸部の砂漠などの柵や鉄条網に囲まれた収容所に隔離された人たちにとっては、まさに降って湧いた災難で、新たな住居などは「バラック」と呼ばれた仮設住宅で、個人のプライバシーもない狭さで、雨風や砂塵が吹き込むこともありました。

このような環境の中で、人々は生活を少しでも便利にするために、乏しい道具と材料を使って机、椅子、篭、棚などの日常の生活に必要なものを作っていきました。しかし、家具や道具さえ揃えば人間らしい生活ができるわけではありません。大きな暴動を起こすこともなく不自由に耐える日系人に対して、また、日本が劣勢になるにつれて上陸の危険もなくなり、収容所内では次第に各種作業所、教育施設、畑なども整備されてきましたが、それでも毎日の生活は単調で、目を癒すものも少なく、スポーツや遊技の道具にも不自由していました。それでも若い人たちや子供には仕事や勉強がありましたが、年配で英語が不得手な日系一世にとっては退屈で辛い日々でした。そのような人たちは絵を描き、手作業でコツコツと置物、人形、装身具、遊び道具などを作り上げました。土中深くから掘り出した貝殻などで作った装身具の緻密さ、朽木や廃材から掘りだした置物などの出来映えは素晴らしく、とりわけ動物や鳥の躍動感や表情は本物を目の前にして作ったかのようです。道具や材料に不自由でも、想像力を豊かに精魂を込めれば、人はこれだけの作品を作ることができるのです。そればかりではありません。手作りの仏壇、木製の刀、茶道具、着物姿の人形などからは、再び故国日本の土を踏むことは絶望的と思われる状況の中でも、自分たちのルーツとアイデンティティを忘れない人間の心意気と尊厳が伝わってきます。

スミソニアン美術館で大成功を収めたこの展覧会は、新たに再構成されて、アメリカ国内の3会場、日本国内の5会場を巡回することになりました。これらのまさに「心のこもった」作品から私たちは、物資と情報に満ち溢れた現代の中で忘れかけている「ものづくり」の原点を知ることができるでしょう。

(さつままさと・東京藝術大学教授本展覧会監修)

 


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