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いよいよパンダがやって来る 小宮輝之

いよいよパンダがやって来る

 「奈良の大仏」で親しまれる東大寺・盧舎那仏(るしゃなぶつ)は、奈良時代、8世紀半ば、不安な世情を憂いた聖武天皇が、国家と民衆の平和を願って造立しました。平安時代末期と室町時代の2度、戦乱で焼失しましたが、そのたびに多くの人々の力で復興され、高さ約15メートルのお姿を今日に伝えています。

 いよいよ、上野動物園のジャイアントパンダ復活が正式に決まりました。七月二十六日、北京の国家林業局において、東京都と中国野生動物保護協会の間にジャイアントパンダ保護研究実施の協力協定書が締結されました。協定書にサインしたのは東京都の村尾公一建設局長と中国野生動物保護協会の臧春林秘書長です。

 このジャイアントパンダ繁殖研究プロジェクトは、ジャイアントパンダ保護を推進し、中国における野生動物保護事業の発展に寄与し、自然環境の保全・野生動物の保護への人々の理解を図ろうというものです。現在、中国がパンダを国外に出す仕組みは、ジャイアントパンダの保全に参加し貢献する場合にのみ、繁殖を中心とした共同研究を目的としてだけなのです。

 上野動物園に来ることになったのはオスの比力(ビーリー)とメスの仙女(シィエンニュ)です。比力は二〇〇五年八月一六日生まれで、六一二という国際血統登録番号が付いています。仙女は二〇〇五年七月三日生まれで、国際血統登録番号は六〇〇番です。国際登録番号は生まれた順番で付きますから、仙女と比力との間に十一頭が生まれているわけです。新聞報道では姉さん女房などと書かれていましたが、実際には同じシーズンに生まれた同い年の理想のペアと言うべきでしょう。

 ともに臥龍パンダ保護研究センターで生まれました。実は二〇〇八年五月の四川大地震で臥龍センターの施設は壊滅的な打撃を受けたのです。毛毛と名づけられたオスが瓦礫の下敷きになり死亡し、一頭は行方不明になりました。パンダは臥龍から五百qほど離れ、成都からは百qほどの山地にある、臥龍センターの付属雅安パンダ保護研究センターに移されました。雅安センターは成都からの観光客も受け入れやすい距離にあり、もともとはパンダ保護の普及センターとして造られました。

 四川大地震後は研究も含め臥龍センターの機能を雅安センターが補完しています。昨年、私が訪ねた時には仮設のプレバブ内にケージを設置し、簡単なフェンスとブルーシートで竹やぶを囲った急造パンダ舎があちらこちらに建っていました。中国野生動物保護協会は雅安で収容しきれない四十五頭のパンダを中国各地の十四か所の動物園やサファリパークに預けたのです。五月下旬に福田飼育展示課長をはじめ上野のパンダチームが調査に行った時、比力と仙女の二頭は広州香江サファリに飼われていました。広州には九頭のパンダがいましたが、七頭は地震後に臥龍センターから避難してきて、預かった個体です。

臥龍パンダ保護研究センターから雅安パンダ保護研究センターに移されて、すくすく育つこどもたち

 臥龍センターはパンダ繁殖では大きな成果をあげてきました。中国では臥龍センターの復興が重要な課題です。なぜなら、観光機能も意識してより低地に造られた雅安センターに比べ、臥龍は本来のジャイアントパンダ生息地域に立地し、パンダにとって暮らしやすく繁殖の成果も期待できるからです。臥龍センターの復興は香港など世界中からの保全資金で進められ、今回の協力協定書の締結で、東京都も復興に貢献することになりました。

 九月上旬には臥龍パンダ保護研究センターからパンダの飼育、繁殖の専門家を上野動物園に迎えました。今のパンダ舎がそのまま使えるかなど点検し、アドバイスをもらいました。また、今後の共同研究についても飼育、栄養、繁殖、検診、行動など具体的な打ち合わせをすることができました。

 上野に来る二頭のことも聞きました。仙女も比力もそれぞれオスメスの双子で生まれ四頭とも元気に育ったそうです。特に仙女の母親英英は五回の双子を含む八回の出産で十三頭を産みました。初めての出産だった一九九八年の双子のオスの子以外はすべて順調に育ち、内七頭は自分で育てたそうです。子育て上手な英英の血を引く仙女もきっと、たくさんの子を産み育ててくれることでしょう。

 仙女とは天女のことだそうですが、比力はとくに意味がなく里親の好きな名だと教えてくれました。臥龍センターではパンダの里親制度があり、餌代などの養育費を負担してくれた人に命名権を授与しているそうです。これからは上野動物園が二頭の里親になるわけで、ぜひ日本で愛される上野に相応しい名前をつけてくださいとのことでした。

(こみや てるゆき・上野動物園長)

 


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